鬼雨奇譚 Ⅷ

鬼雨奇譚 Ⅷ




鬼雨奇譚 ななつ→

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「娘、己の姿を忘れてはならない…さぁ、思い出せ…自分の姿を」

その方はそう言ってファスインへ向けて左手を差し伸べる

「あんた・・何を言って?」
怪訝そうな顔をファスインは此方に向けた

「お前は…そんな形では無かろう?彼方ではどのような姿であったのか…思い出せ。」

その方の眼力は、武術なんて全く分からない自分にも分かる位の覇気あって…竦み上がりそう
私の斜め前に立つ夫は、息子を此方に向けつつ自分の顔はその方の方をじっと、何かを信じて…見詰めている

「お前の本当の名は…何と言う?彼方では何と言われて呼ばれて居った?
お前が戻りたい姿はそれでは無かろう?彼方には、白髪の弟が待っておるだろう…それなのに、まさか…帰るつもりは無いとでも?」

その方の掌がファスインに伸び、いよいよ額に触りそうになった時…急に変化は起こる

「お…とう、と…。
そう…よ、戻らなきゃ。あの子、また泣いてるわ?周りが怖くて、大人が怖くて。私が…守らないと」

ファスインはそう言うと、急に空(くう)を見ながらそう言って…

その方の掌は、額に到達する事は無くて…ファスインの姿は驚く程早い速度で…若く、後退した
何時もの真っ赤な服じゃなくて…女の子が着るような…チマで。

髪もみつあみで下ろしてて…私達の見知っている火手印毛緋玲(ファスインモビリョン)では無くて…

隣りに息子を抱いて立って居た夫も、驚いた目でその様子を見てた
恐らくは…その場で、肉体を持つ全ての人が…同じ目で。

小さくなったその子の前にしゃがみ込み、その方はその子の肩へ手を伸ばし…添える

「弟は、どうした?」
その子は、その方にそう聞かれて泣きそうな声を出した

「今日は…あの子、皇宮から出られなかったの。笛の吹き手は帰っちゃ駄目って。
だから…今日は兄者の元へ一人で戻ろうと…」
その子がそう言うと、その方は「そうか。」と言い…此方を向いた

そうして、しゃがんだまま此方を向いたその方は夫に向かって言う

「俺の知るこの女は…この娘の形だ。
ドギツイ化粧も何もしておらん、素朴な娘で、いつも白髪の弟が側に居て仲良くしておる。」

その方がそう言うと、傍に居た厚鳳が質問する

「成程…その女性は…その形で居る時が本当の自分だったと…言う事ですか?」

聞かれて、その方はゆっくり厚鳳の方を向き…言う

「先程の右手に力を籠める仕草を見るに…この娘も内攻を使う者であると思うが…
内攻は、使い方を間違えば自我を壊す
時に、内攻を強める為、先を導く筈の者が…度を越えて人物の我(が)を壊そうとする傾向もある。
人は「我」を守る為、別の人格を引き出す事もあり…性格が変わってしまう事もある…」

その方がそう言うと、隣の夫も声を出す

「故に、何時如何なる時でも『我(われ)』を見つめよと師父は仰っていた。」
そうして、此方へ何時もの視線をくれる

優しい眼差し、優しい…笑顔

「そうだ、人を殺める自分達…鬼となり人を斬るが、『我(われ)』を忘れて心の底からの鬼になってはならぬと…何度も、言ったな。」
その子の手を握り、その方はゆっくりと立ち上がる

先程の恐怖を感じるほど大きな雷鳴の後、急に雷の音が小さくなったような気がする…
雨音も、滝の様な音から川の濁流の様な音に僅かだが変化が出て来た

「娘よ、そろそろ…兄者の元へ参ろうか?迎えが来ておるようだ。」

その方は小さな女の子になった火女…火手印毛緋玲に向かって優しそうな顔でそう言った
典医寺に居た他の医員達の魂魄も、ファスインが女の子へ戻ったのを見て少し安心している様で…川の濁流の様な音の中でざわざわとまた、声が出始める

その方はファスインの手を握りつつ、此方を見る

「ヨン、子供を見せてくれ…心残りを残しては戻るに、戻れぬ」

その方がそう言うと、夫は私の腰に手を片方回して前に出る様に…と、促し、私は…抱き締めた娘を抱き直し、娘の顔を私の着物の襟の間から出す

子供は、不安そうに顔を出すから…その子の顔を見ながら、笑ってみる

子供は…笑うと、笑い返す。
女の子は側に父親が居る事にも気が付き…夫の方へ顔を向け、漸く笑う

男の子の方は、夫が声を掛けた

「もう、雷は行ってしまった。顔を出して見よ。」

そう、息子に声を掛けると、息子が恐る恐る夫の鎧の胸に埋めた顔を上げた
その瞳で夫を見て、夫はその息子に笑い掛ける

夫の笑顔を見て、息子は安心したらしく…やっと、夫の腕の中で喃語を一言、二言…出す
その様子を、その方は目を細めながらご覧になって…お話になる

「まさか…あのやんちゃ坊主が、この様に良き父になっておるとは…
時間とは、なんと早く流れるものよ。」

言って、その方は此方を見た

「天女を娶ると、どんな荒くれた男も穏やかになってしまうものなのか?」
その方は此方を見て、そう…言った

天女って…多分、自分の事を指していらっしゃるんだろうと思うけど…

「あの…天女なんかでは無いんです。私はただの人間の女です」
その人にそう、言った
すると、その方は瞳を大きく開けて…仰った。

「何と…天女『なんか』と仰るか…。何とも、豪胆な女人だ…
天上人を『なんか』とは。ははは…」
そう言って此方を見てから、夫の方を見て笑った。

その様子を、その方と私達の間で見ていたトルベ君とチャン先生も楽しそうに笑いながら見てた
その時だった…

典医寺の大扉がけたたましく開いた音が聞こえた。

そう、あの大扉が開く音が聞こえるほど…外の雨は降り止み始めていた




鬼雨はもうじき…終わる

終わったら…この人達は、どうなるのかしら…?
典医寺の大扉を開いて中に入って来たのは…チュンソクさんだったみたいで、大きな声でトクマン君を呼んでる…








※ただ今、リアルがお盆中…長男の嫁は色々やる事が勝手に増えて行きます…(´;ω;`)ウゥゥ
今日も…どうなるかな(;^_^A
やれる所まで、頑張りま~す♪
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by 2540hnnhk | 2017-08-13 07:24 | 追福 | Comments(0)

「信義~シンイ~」に魅せられてその後のお話を綴っています。イラストも描きたい物を描いています


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