闇戦記 六

闇戦記 六








王様への謁見を終え、戻る途中…妻に会う
どうやら妻は、王妃様の健診へ向かうようで此方を見つけて手を振って来る

他の医員達や警護の手前、俺が妻に手を振り返す訳にも行かず…無言で妻の方を見ると、妻は此方を何だか妙な顔をして見返して来た
此方もどんな表情をしたものか…分からず、なんの身構えもせず普通の表情をしたつもりだったのだが…妻はそのまま此方を見続け、眉間に皺を寄せた

妻の後ろの医員と、前を歩く武閣氏に、妻は暫し待つ様に伝えると、此方に向けて歩いて来る

「どうかした?そんな顔して…」

妻はそう言って、此方を見る
傍に寄り…上向いてそう聞いた

「そんな顔とは…?いつもと同じだ。」
そう言うと、妻は首を横に振る

「ううん、違うわ?いつもと全く違う顔してる。
何か心配事?」
妻は小さな声でそう聞いた

本当に…妙な処で勘が鋭い…
隠そうと思っている事がある時ほど、直ぐにばれそうになる…

が、其処は…ばれて貰っては…困る故

「心配事なら、山の様に。今日は少し遅くなる…」
それだけを言って、妻の前を通り過ぎようと一歩、前に出る

その時、袖が…

袖が、急に引っ張られ…其方を見ると、妻が袖の端を掴んで放さない

「なんだ?」
そう聞くと、妻は口を噤み…じっとこちらを見る

「騙されないわ?その顔…何か隠してる。
良いわ、今はどうやら私も貴方も忙しいから…解放してあげる
今日は遅くなるのね?」
聞かれて頷く

「あぁ。かなり遅くなる故…先に…」
其処まで言い掛けると、妻は言う

「待ってる。ずっと起きて…お夜食でも用意してるわ?」
そう言って、此方にまた手を振り微笑んだ

全く…あの女(ひと)も本当に頑固で困る
仕方なく…右手を上げて妻の手に答えると、妻は満足げな笑みを此方に向け、医員達と共に王妃様のいらっしゃる坤成殿の方へ歩き出した

それを見送り…曲がり角で医員達と妻が曲がってから、大きく溜め息を吐く

言える…訳が無かろう。
鬼の所在を確認する為、元の方へ潜入する等と…

そんな事言えばどうなるか。

余りに分かり過ぎて頭が痛んで来る…
元側へ潜入すると言う事がどう言う事を意味するか…あの女(ひと)に分らぬ筈はない。
かと言って…屋敷に帰らぬ訳にも行かぬ。

少なくとも…、自分達は新婚で。

差し迫った戦や争い、問題も表向きは無いという言うのに…俺が外から見て意味もなく屋敷に帰らねばあっという間に妙な噂が立つ

そうなれば…あの人の疑問は自分の行動を持って確証を得ようとする方向へ変わる
そうなる前に、あの女(ひと)が不審がらないような理由を付けて出掛けねばならんだろうな…

元に出向く事自体、自分にとってはそう難しい事ではない。

ただ、やはり不気味と感じるは「鬼」の存在。
本当に居るのか、居るなら…どんな物なのか…全くそれが掴めん

そんな思いを胸に秘め、自分の執務室の方へ歩く

さて…どんな理由で騙されてくれるのか…
少なくとも、此方から今回の偵察の事を一文も言うつもりは全く無い。








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by 2540hnnhk | 2017-08-23 15:22 | 紅い洪水、蒼い雪崩 | Comments(0)

「信義~シンイ~」に魅せられてその後のお話を綴っています。イラストも描きたい物を描いています


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