忍ばぬ恋・6

忍ばぬ恋・6




案の定、あの方の元へ向かうまでテマンは戻らず…
あの方の元へ着いてからは、彼奴の回した大掛かりな狸芝居のお陰で俺と女は謀反者扱いを受ける事になる

お加減が悪い、あの方まで連れて…逃げる事になる等…

多過ぎる兵達を撒いて二人を逃がす為に、一人此処に残る

あの方をあの女に託して。

少なくとも、女はあの方の事を悪くはしないだろう…
ほんの半日ほど一緒に居ただけではあるが…女はあの方にはとても優しく受け答えをしていた
痛がれば、摩り。
それでも駄目なら…笑わせ。

女の側面を久しぶりに垣間見た様で…

そうだった
この女はそう言う女だったと、あの方と楽しそうに笑う女を見て思う。

口でどれだけ嫌味を言ったり我儘を言ったりしていても、患者や子供には結局優しくしか出来ない女で

今のあの方をあの女が庇わない筈はなく…
少なくとも、今は俺と同じ立ち位置で逃げている身。

あの方を託せる者は、最早…あの女しか居らず

二人を馬に乗せ、そのまま馬に走れと言った時、あの女は此方を振り向き…気のせいだろうが、とても切なそうな顔をした

その瞳が二人を見送っても尚、脳裏から離れず…頭を振る

追手は、かなりの数の兵が山に放たれた様で…
山のそこら中に人の気配。

既に、俺を斬る命令が下されているのか殺気だらけで、隠れている意味がない程で…。

これだけ、殺気を帯び、隠れて居れば此方から姿を見ずとも場所が分かる
どんな餌をその目に見せられてそんな風に殺気を帯びているのか…想像に易いが、毎度繰り返すこう言った追手が本当に面倒臭い

金や地位に目が眩み…その所為で、自分と敵の力量を見誤る
余りに、笑える

こんな奴らに俺がやられると思っていて…あの男はこいつらを寄越したのかと思うと、少し苛立ちさえ覚える

馬鹿にしやがって…

蛇の様に面倒臭い男だとは思っていたが…まさか、あの女のお陰で俺まで目を付けられる事になるとはな…
本当に面倒臭い

こう言う事全てが嫌で、皇宮から逃げたかったと言うのに。

追手の兵は雷が鳴りだした森の中にかなりの数、潜み…此方を狙う
森の中を駆けながら、隠れて此方を狙っている奴らの後ろに出られる様に、気配を探りつつ先を進む。

俺が動き、その俺を狙って一緒に動く者が居て結局、俺の姿を見失っている男の後ろに飛び出し一太刀で息の根を止める。
面倒臭い奴等ではあるが…せめて、苦しまぬ様に…

一人目を殺った頃、雨が急に強く降りだした。

雷鳴は、自分の怒りを代わってぶちまける様に森の中に鳴り響く
今から自分は、何人斬るのか…考えるだけで目の前が真っ暗になる

だから、考える事は捨てた。

自分の前に兵を送り出して来たあの男への忿懣(ふんまん)をぶつける様に、自分の前に立つ兵を一太刀で斬る。

斬られる必要もない人間を、斬る必要もない人間が…斬る。
その余りに馬鹿らしい事に憤りを感じない者が居るのだろうか?

あぁ…居るか。

あの男…キ・チョルはそう言う男だった
あの、参理もそうだ。

あいつらからしてみれば人など人にあらずだったな…

糞みたいな高官は、数えれば確かにキリがない。
政を担う者の多くはそう言う輩が多いものだ…

あんまり長閑な場所で、昼寝ばかりをしていて忘れていた。

大きな雷鳴は、私兵どもを恐れさせ…森から兵の姿が少しづつ消えて行く
雨は自分の身体に叩き付ける様、勢いよく降る

森の奥、残ってしまった私兵達は自分の欲の為に俺へ向い剣を携え走り込む

仕方なく…自分は自分の剣を振るだけ
剣が当たれば血飛沫が噴き出し顔を濡らし、着物を濡らす…

その血を、叩き付けるような雨は洗い流す事が出来ない…








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by 2540hnnhk | 2017-08-27 21:37 | 雪白時間 | Comments(0)

「信義~シンイ~」に魅せられてその後のお話を綴っています。イラストも描きたい物を描いています


by のの